<初稿>
エッセイ『世界音痴』で知られる歌人、穂村弘によると、恋人の過去の恋や出来事に、今更、嫉妬の炎でムラムラしちゃうことを「思い出し笑い」ならぬ「サカノボリ嫉妬」とゆ〜のだそーだ。 ふ、不毛だなぁ〜。
いや、俺個人としては相手の過去の話は聞きたいけれど、ムラムラはしないタイプかと。でも、こっちの過去を聞かれたら‥‥まぁ嘘は言わないけどさ、話さないことはあるでしょ。だって男は、そういう不毛な生き物だから。そして真実は劇薬だから(笑) ぶっちゃけたほうがそりゃ自分は楽だけど、語れないことは、何か他に聞いて貰えばいいよ。
サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい
穂村氏の歌でございます。エッセイも面白いが彼の歌集は奇跡の書。
ってことで、いつかアフリカのサバンナに行き、象のうんこ見つけたら、この不毛な歌でも思い出したいもんだと。でも、うんこは肥料にも燃料にもなるし、実は不毛ではないのだよ♪ フン転がしのご飯にもなるしな♪
- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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みどかつSS 御堂×克哉
< Luciferians - 信徒 -> ルシフェリアン <5> この身の内にあるなんて知らなかった なんて不毛で、なんて取り返しのつかない想い。 この焦燥感はなんだろう。 「‥‥克哉?」 いぶかしげな声に引き戻される。 その声に答えずに、少し無理に力をかけて、あなたをうつ伏せに引き倒す。 こんなこと、初めてですよね。 傷ついた背中は僅かにあらがって、それから、ゆったりとベッドに身を伏せる。 その目をキスで塞ぐ。 視線はいつもあなたの一番の武器だから。 横たわる綺麗な背中。その上に束ねられ 「痛みますか‥‥」 吐き出せない疑問の代わりに、尖ってゆく舌。 「‥‥っ」 痛みを噛み締めた吐息が熱く荒くなる。 「‥‥挑発してるのか?」 それはあなただ。 取り戻しようのない過去でさえも。 君のせいで歯止めが利かなくなると、そんな風に私を煽るなと、繰り返し言われるけど、そんなの、全部あなたのせいだ。 噛みしめる唇でなぞる輪郭が揺らいだ。 「何が欲しいんだ、克哉」 あなたが。 それがどんなに身の程知らずな欲かオレは知ってる。 「腕をほどいてくれ‥‥」 甘く低い声が囁く。 風を切るようなため息とともに 大きな翼に抱かれるみたいに。 「その何もかも許す瞳で私を見るな」 きっと、ゆるしてなんかいない。 ゆるしなど請わないで。他の誰にも。 「歯止めが利かなくなると‥‥私は、いつも‥‥」 かまわない。 「その微笑が愛しくて‥‥奪い尽くしたくなる」 世界は反転し、熱い身体に組み敷かれる。 見下ろすそれは、引き裂く獲物を前にした猛禽の眼。 あの時のように。 恐ろしくなんかない。飢えたような眼差しは、きっとオレの瞳の色をそのまま映してる。 逆らう間もなく両手を捩じ上げられ、容赦なく頭上に縫い付けられる。今度はオレの手首に巻きつけられ、きつく食い込む朱赤のタイ。 炎が触れるような愛撫。 かまわない。 その罪で、この爪で どこへもいかないでください。 どうか、ずっと、ここにいて。 そのすべてをオレに下さい。 FIN
黒く胸を焼き焦がしてゆく感情。
身体の奥から、きな臭く、肉の焦げる匂いがする。
知りたくなど、なかった。
過去に嫉妬するなんてことがありえるとして。
少し顎をまわして、乱れた前髪の中から、左目だけが薄く光ってオレを見ている。
今夜は全部オレにください。
赤いタイに拘束された二本の腕。
またその上に、そっと身を寄せて、また舌を這わせる。
爪痕に沿って。
口にした、いたわりの言葉とは裏腹に、この唾液は熱く傷口に沁みる筈。
唇の下で痙攣する背中。
あの時も、今も、あなたが欲しくて気が狂いそうになる。
求められているだけで奇跡なのに、もっともっとあなたが、あなたのすべてが欲しくなる。
こんな恐ろしいほどの欲望をあなたがオレに植えつけたのに。
覆いかぶさり、オレの両足の間に閉じ込めた筈の体躯が勢いをつけ反転する。
背中の傷口も拘束した腕もかまわずに、捻るように仰向いて、鋭い目がオレを見上げる。
いつか身の内で大きく膨れ上がってオレを食い破る。
それでもいい。それでも願うことは止められない。
言われるままに背の下のタイをまさぐり、硬く絡んだ結び目を手探りのままほどく。
横たわったあなたの手がゆっくりと広がって、胸の上にうずくまるオレを羽交いにつつむ。そっと羽毛のように優しく頬に触れる指先。
愛しているだけ。
誰よりも傲慢で、誇り高いあなたでいて欲しい。
そう微笑んでみせる。だって。
ゆるされたなら、あなたは行ってしまうのでしょう?
決して誰にも手の届かない高みへ。
ほの昏い嗜虐の衝動に翳る無慈悲な笑み。
首筋にかかる荒い息。歯を立てられて悲鳴を上げた。
慣らされぬままに一気に貫かれる感覚が、胸の焔と共鳴する。慄きは鋭く全身を駆け抜け、与えられる激痛に仰け反る。
この地上に留まるために、あなたに罪が必要ならば、どうかこの身体の上で。
幾度でも、罪を犯して。
何度でも、その翼を引き千切って。
堕ちてくるあなたを待っている。
過去へも未来へも。
Luciferians ルシフェリアン
14世紀、「ルシフェル信徒」と呼ばれたグノーシス派の分派。ルシフェルを崇拝し、彼は神と兄弟だったが、人を無知のままにおこうとする神の意に逆らった為、不当にも天界から追放されたと信じた。ルシフェルはプロメテウスのような人類の味方であり、英雄、救世主であり、彼のもたらす「光」こそが真の意味での啓蒙であると主張したが、異端的な見解とされ火刑に処された者もいた。
「バルバロイ」 参照させて頂きました。