-放浪腐女発酵観察日記- ブログ版

オタな海外放浪貧乏旅行者の腐女子覚醒日記。SF,ロボット、天文好きな皆既日食ハンターの筈が、ある日うっかり腐海に墜落。やおい免疫あったが仇のBL大発症。急遽、隔離病棟設置。こちら腐れ外道blog。 ダダ漏れ萌えと、オタク独り語り、阿呆バックパッカー海外貧乏旅行バカ話しか御座いませんが、お暇ならごゆるりと(^_^;)  ★はてなダイアリーがメイン。こちら同記事の予備です(๑╹◡╹๑) http://d.hatena.ne.jp/kokuriko-fufu/

みどかつSS < Luciferians - 信徒 - > ルシフェリアン ALL



みどかつSS    < 10月13日 初稿>


< Luciferians   - 信徒 - >  ルシフェリアン


     < 告解 -Confession- > メガミドSSリヴァーシブル版 










 傷跡は何かに似ていた。


その背から、何かが無理やり引き千切られた痕のような。
捕らえられ、なお羽ぶく、それは失われた翼の記憶。




  < Luciferians  - 信徒 - > ルシフェリアン




夢うつつのまま、朝のキスをされた。
隣に横たわっていた温かな体がベッドを抜け出し、そっとバスルームに立つ気配を夢の続きのように追う。
一晩中、愛された朝はどうしても意識がぼんやりしてしまう。手も脚も自分のもののようには動かない。
この部屋の家主より早く起きられないのは、とても問題だと思うのだけれど。



気怠い身体をようやく起こすと、バスルームのドアが開く音がした。
シャワーを浴びて髪を拭きながら戻ってきた、その人の背中を見て、オレは息を呑んだ。



「御堂さん、それは」



白い皮膚に斜めに朱を引く裂傷。
左右の肩甲骨の上に、幾重にも走る流星雨みたいな爪跡は‥‥どう考えても昨日の夜の自分のせいだ。



「いい、かまうな」



せめて消毒しますと、あわててベッドから飛び降りたけれど、御堂さんは、手早く身支度を済ませてしまい、どうしても抜けられない付き合いだからと、出かけていった。
必ずここで待っていろ、と言い残して。


「‥‥はい。いってらっしゃい」



少し照れたように後ろ手のまま手を振って、閉じられるドア。軽々とゴルフバックを背負った背中をただ見送った。
でも、あの傷が痛まないはずはないと思う。



落ち着かない気分のまま、御堂さんの部屋でぼんやりと昼を過ごした。大好きな人を傷つけてしまった指先を後悔と一緒に噛みしめながら。


空が黄昏に染まる頃、待ちきれなくて何度も見下ろすテラスから、車が戻ってくるのが見えて、オレの心臓は勝手に跳ねあがった。



「おかえりなさい」



玄関に出迎えると、いきなり腕を取られた。汗をかいた、シャワーを浴びるぞと、なぜかオレまでそのままバスルームに連れ込まれる。服を脱がされ、二人であたたかな流水を浴びる。


抱きしめられて、泣きたくなった。
ほんの半日、離れていただけなのに、寂しくて、会いたくて、どうにかなりそうだったことに改めて気づく。
水音にまぎれる気安さのせいか、そんな気持ちをそのままオレは言葉にしてしまう。
それとも、最初の告白がここだったせいなんだろうか。シャワールームではいつもより大胆になってしまう気がする。


与えられるキスに夢中になって、あなたの背中に手を回したところで、その荒れた手触りに、ようやく我に返った。


昨夜、爪を立ててしまった背中の傷。
甘噛みどころか歯を立ててしまった肩。


目を開けて、御堂さんの顔を覗き込むと、軽く顔をしかめながら微笑んでいる。
心配ないと、軽く目元にキスをくれた。


そしてオレに見せつけるように、背中を向けて笑い、濡れて光る傷口に肩越しに触れた。



「勲章だ」



不敵に唇をゆがめ、シャワーのコックを閉める。
傷は今朝見たときより、赤みを帯びて腫れてるように見えた。



「薬を塗らないと。膿むかもしれません」



かまうなと微笑んで、手を伸ばし、オレを引き寄せ、頭ごとタオルで包んで、くしゃくしゃと髪を乾かしてくれる。手つきは荒っぽいけど、なんだかすごく甘やかされている気がする。


でも、御堂さん自身、さり気なく身体を拭いているけど、タオルの生地が背中に触れるかふれないかで、反射的に眉が寄るのが見えた。
ローブを羽織らずに、バスタオルを腰に捲いたまま、ベッドに座る。
ほら、きっとかなり傷が痛むんだ。


サイドボードから塗り薬を取り出す。
聞けば、きっと必要ないって言われるから、ベッドに上って、そっと背後からにじり寄った。
傷口に薬を塗ろうと指先を伸ばせば、身体をよじって、キスを仕掛けてくる。
ベッドで、その唇につかまったらもうオレが抗えないと知っていて。
背中に隠れるようにして小さく叫ぶ。



「みど、うさん。動かないで、‥‥ください」


「なぜだ? 君がキスが嫌いだとは知らなかった」


「薬が塗れませんっ」



伸ばされた右腕を手首をつかんで捕まえた。
いたずらな指を封じこめるために、強く指をからませる。
もう片方の腕を探って、さらに手を伸ばすと、つかみかけた瞬間に逃げられた。
しばらく不毛な追いかけっこが続く。



「もう、からかわないで下さい、御堂さん」


「何が欲しいんだ、克哉?」



この人はいつも‥‥こうたずねる。
誰よりもオレの欲しいものを知ってるくせに。
どんな小さな欲望もちゃんと言葉にしないと、絶対に許してくれない。


キスだけはいつもオレのねだる前にくれるけれど。



「両腕とも、全部、オレにください」



欲張り者めと笑う声がする。
オレを欲張りにするのは誰ですか、そんな言葉を飲み込んで、ようやく差し出された腕を取る。
後ろ手になり、手首をつかまれてもなお愛撫を仕掛けようとする不埒な指先。



仕方のないひとだ。
思わず口元がほころぶ。



そちらがその気なら‥‥オレも悪戯、しちゃいますからね。


目の端に、朱のラインがかすめた。ベッドの端に放り投げたまま、シーツに埋もれて忘れられていたオレのタイ。引き寄せて、後ろ手に重ねたその手首に巻いてみる。



「何をする気だ?」



なりゆきを楽しんでいるような口ぶりは、御堂さん、いつものあなただ。



「何だと思います?」



幾重にも巻いたネクタイを少しきつく締めて、手首の上にリボンのように結び目を作る。後ろに両肩が寄せられ、肩甲骨が浮き出、薄くなった白い皮膚の上で傷口がより強く血の色を浮かべた。
その赤と白のコントラストは余りに蠱惑的で、たまらずに背中ごと抱きしめてしまう。体温にとがり始めた胸先が、いく筋もの裂傷をかすって、あなたを刺激した。



「‥‥っ」



痛みに眉をしかめる気配がして、あわてて身体を離す。



「‥‥御免なさい」



傷口は、一日シャツと擦れ合い、汗にぬれたせいか、膿むような熱を持って、オレの胸に触れた。
治療、しないと。



「消毒しますね」



薬を塗ろうと思っていたのに。
チューブは知らない間に、ベットから転がって落ちた。
よく効く薬だけれど、涙が出るくらい痛く沁みるのをオレは知ってる。
そのかわり、唇を寄せる。
傷をなめる動物みたいに。



舌をやわらかく溶かして、肌に触れる。うなじから背中へ。ことさらゆっくりと動かして、傷口へと這わせてゆく。眼を閉じて、舌にすべての感覚を乗せて、あなたの輪郭だけを追う。


あなたがいつもオレにするように。
同じ仕草をなぞってゆけば、あなたの心を知ることはできないかと思って。
舌先に滲む脈打つように熱い肌。一息ごとに鼻先をかすめる髪の香り。


ただ、いとしい。


かすかな肌理の上に走る傷跡の迷路をたどりながら思う。この皮膚をはがして、あなたの中に溶け込めてしまえばいいのに。



「克哉。君は‥‥」



熱を孕んだ声がして、意識が引き戻される。
肩口に爪を立てて、ねじるようにあなたの顔を引き寄せて、キスをする。



「ゆるしてくれますか。御堂さん」



互いの身体に挟まれて、あなたの腕が痙攣するように身動きをする。
後ろ手にねじれたまま、もがく翼のように。
捕らえられ、抑えられた腕の下で、なお羽ぶく誇り高い鳥のよう。羽毛を散らして羽ばたく翼の音が聞こえる気がする。



ああ、そうだ、わかった。この傷口が何に似ているか。



引き千切られた羽根の痕跡。
翼の記憶を持つ背中。



その翼は、オレをさらって別の世界に運んできた。。



きっとあなたは、
いつか物語に聞いた異教の神に似ている。



稲妻と肉欲を司る翼持つ者。
愛と傲慢の罪で、天より地へと堕とされた。




最初に思った。
人ではないと。


屈辱に打ちのめされたあのとき。


あなたの前で、オレは人間ではなく
あなたは、オレの前で人ではなかった。


恐ろしくて、まともに見つめることすらできなかった
この世ならぬ色を宿した強く鋭い鋼の双眸。
背筋が凍るような酷薄な笑い。



あなたをなんと呼べばよかったのか。
今になって知る。



その残酷な手で、人として譲れないものをもぎ取られたのはオレのほうだと思っていた。でも、あなたが人となるために喪失くしたものはなんだったんだろう。




時折、真夜中にふと眼が覚める。
微かにつぶやく声に、淡い愛撫とキスに。


そんなとき、オレを背中から抱いて、あなたはひとり闇に目覚めている。


ひそめてなお押さえ切れず、途切れながら続く‥‥その声。




<更新中>


そっと、そうっと贈られる耳元へのキス。
優しく髪をすく指。いとしげに髪の香りを吸い込む息。
輪郭をたしかめるだけの、淡い淡い愛撫。



どんなに深いキスや交わりよりも雄弁な告白。



眠っている振りで、あなたの懺悔を聴いている。
夜は長くて、果てがなくて、オレは牧師にはなれなくて。
ただ、泣きそうになる。


耐えられなくて、腕の中で振り向いて、あなたにしがみついて、キスをした。
愛撫に目覚めた振りをして、寝ぼけた素振りで甘えるように顔を寄せ、あなたのくちびるをふさぐ。
何も聞かなかったと、アリバイの立証に似た苦いキス。これ以上は聞きたくないと、証拠隠滅のような卑怯なキスで。



忘れて欲しい。
あれが罪でなかったとは言わない。
でも、ゆるすもゆるさないも、もう全部過去のことだと、膨らみすぎた思いは声にならない。
言葉が必要なら何度でもあなたをゆるすと叫ぶのに。



闇の中で、どこか遠くを見つめる目。



誰もがあなたを求めるのに、その孤独に届かなかったのだろうか。



誰もが‥‥



脳髄の中で何かがスパークした。目も眩む火花。
何かが焦げるきな臭い匂いが、鼻の奥で湧く。


そこにあるのは、知りたくなかった答え。



あなたがゆるされたいのは、オレにじゃない。
オレにだけじゃない。




オレの知らない過去。
オレのゆるすことのできない、オレの届かない時間。
あなたの、あなただけの過去だ。


そこに届くのは
オレの知らない言葉だけ。
この舌で発音できない言語が響く遠い国の出来事のように。


考えるのが怖くて。
沸きあがろうとする疑問を無意識に押さえつけていた。
決して言葉になんかできない問い。




御堂さん。
オレが、初めてではないですよね。
あんなふうに‥‥人を餌食にしたことは。



物慣れた誘いかけ、余りに手馴れた段取りと仕草。
簡単に取り替えられる玩具に過ぎないからこそ‥‥
できた冷酷な仕打ち。



いつからですか。
幾度繰り返したのですか。
それは誰だったんですか。


あなたの身体の下でもがいて
その光に焼かれて快楽にむせんで
逃げ出そうとしながら果たせずに苦しんで‥‥。




一体、何人があなたの足元に跪いたのだろう。



オレと同じように。




血の気が引く。手足が虚ろに感覚を失う。
背筋が震えてる。
呼吸が出来ない。


あなたの思いを疑っているわけではないのに。
これは恋だと信じているのに。



でも、オレは、本当に違う存在なんだろうか。





あなたの過去たちと。





この身の内にあるなんて知らなかった
黒く胸を焼き焦がしてゆく感情。
身体の奥から、きな臭く、肉の焦げる匂いがする。
知りたくなど、なかった。



なんて不毛で、なんて取り返しのつかない想い。
過去に嫉妬するなんてことがありえるとして。



この焦燥感はなんだろう。




「‥‥克哉?」



いぶかしげな声に引き戻される。




その声に答えずに、少し無理に力をかけて、あなたをうつ伏せに引き倒す。



こんなこと、初めてですよね。



傷ついた背中は僅かにあらがって、それから、ゆったりとベッドに身を伏せる。
少し顎をまわして、乱れた前髪の中から、左目だけが薄く光ってオレを見ている。


その目をキスで塞ぐ。



視線はいつもあなたの一番の武器だから。
今夜は全部オレにください。




横たわる綺麗な背中。その上に束ねられ
赤いタイに拘束された二本の腕。
またその上に、そっと身を寄せて、また舌を這わせる。
爪痕に沿って。



「痛みますか‥‥」



吐き出せない疑問の代わりに、尖ってゆく舌。
口にした、いたわりの言葉とは裏腹に、この唾液は熱く傷口に沁みる筈。



「‥‥っ」



痛みを噛み締めた吐息が熱く荒くなる。
唇の下で痙攣する背中。



「‥‥挑発してるのか?」



それはあなただ。
あの時も、今も、あなたが欲しくて気が狂いそうになる。
求められているだけで奇跡なのに、もっともっとあなたが、あなたのすべてが欲しくなる。



取り戻しようのない過去でさえも。




歯止めが利かなくなると、煽るなと、あなたはいつも言うけれど、それはあなたのせいだ。
こんな恐ろしいほどの欲望をあなたがオレに植えつけたのに。



噛みしめる唇でなぞる輪郭が揺らいだ。
覆いかぶさり、オレの両足の間に閉じ込めた筈の体躯が勢いをつけ反転する。
背中の傷口も拘束した腕もかまわずに、捻るように仰向いて、鋭い目がオレを見上げる。



「何が欲しいんだ、克哉」



あなたが。


それがどんなに身の程知らずな欲かオレは知ってる。
いつか身の内で大きく膨れ上がってオレを食い破る。
それでもいい。それでも願うことは止められない。



「腕をほどいてくれ‥‥」



甘く低い声が囁く。
言われるままに背の下のタイをまさぐり、硬く絡んだ結び目を手探りのままほどく。


風を切るようなため息とともに
横たわったあなたの手がゆっくりと広がって、胸の上にうずくまるオレを羽交いにつつむ。そっと羽毛のように優しく頬に触れる指先。


大きな翼に抱かれるみたいに。




「その何もかも許す瞳で私を見るな」



きっと、ゆるしてなんかいない。
愛しているだけ。



ゆるしなど請わないで。他の誰にも。
誰よりも傲慢で、誇り高いあなたでいて欲しい。



「歯止めが利かなくなると‥‥いつも‥‥」



かまわない。
そう微笑んでみせる。だって。
ゆるされたなら、あなたは行ってしまうのでしょう?
決して誰にも手の届かない高みへ。



「その微笑が愛しくて‥‥奪い尽くしたくなる」



世界は反転し、熱い身体に組み敷かれる。


見下ろすそれは、引き裂く獲物を前にした猛禽の眼。
ほの昏い嗜虐の衝動に翳る無慈悲な笑み。


あの時のように。



恐ろしくなんかない。飢えたような眼差しは、きっとオレの瞳の色をそのまま映してる。


逆らう間もなく両手を捩じ上げられ、容赦なく頭上に縫い付けられる。今度はオレの手首に巻きつけられ、きつく食い込む朱赤のタイ。


炎が触れるような愛撫。
首筋にかかる荒い息。歯を立てられて悲鳴を上げた。
慣らされぬままに一気に貫かれる感覚が、胸の痛みと共鳴しながら鋭く全身を走り、激痛に仰け反る。



かまわない。
この地上に留まるために、あなたに罪が必要ならば、どうかこの身体の上で。
幾度でも、罪を犯して。



その罪で、この爪で
何度でも、その翼を引き千切って。
堕ちてくるあなたを待っている。



どこへもいかないでください。
過去へも未来へも。


どうか、ずっと、ここにいて。



そのすべてをオレに下さい。

                              FIN











Luciferians ルシフェリアン

 14世紀、「ルシフェル信徒」と呼ばれたグノーシス派の分派。ルシフェルを崇拝し、彼は神と兄弟だったが、人を無知のままにおこうとする神の意に逆らった為、不当にも天界から追放されたと信じた。ルシフェルはプロメテウスのような人類の味方であり、英雄、救世主であり、彼のもたらす「光」こそが真の意味での啓蒙であると主張したが、異端的な見解とされ火刑に処された者もいた。




 Lucifer ルシファー (ルシフェル
ルキフェル(羅)、ルシフェル(西 Lucifer, 葡 L醇Difer)、ルチーフェロ(伊 Lucifero)などと表記。

「光をもたらす者」の意のラテン語で、太陽の誕生を告知する「明けの明星」の神の称号。稲妻と肉欲の双方に関連づけられ、八枚又は十二枚の羽根、炎の翼を持つとされる。


元来は、悪魔や堕天使などとは一切無縁の存在だったが、キリスト教の伝統ではサタンの別名ともされる。西欧の伝説では、大天使長であったルシファーは、神をも凌ぐ力があると驕り高ぶり、天使を集め神に反旗を翻したが、敗北し堕天されたとする。或いは、自分たち天使よりも劣った存在にも関わらず、神から寵愛を受ける人間に嫉妬し、その怒りの故の反逆であったとも言われる



「バルバロイ」 「怪物森羅万象」  参照させて頂きました。